Behind Glowa #10|レイアウト vol.5

今回は別会社さんとの打ち合わせのお話。

廊下幅が1.4m必要って、本当?

今回の別会社さんからは、これまでとは少し異なる視点からのご提案をいただいたのですが、その中で浮上したのが「廊下幅問題」。

札幌市の「福祉のまちづくり条例」では、延床面積500㎡以上の建物には、廊下幅1.4m以上が必要という規定があるとのこと。

正直、広くはないクリニックにとって、この条件はかなり厳しい制約になります。

処置室を大部屋に? 苦渋の設計案

その制限をなんとかクリアするため、今回提案されたのは、
「処置室3つを、ひとつの大部屋として区切りで分ける」というレイアウト案。

これなら廊下幅を確保しつつ、排煙の基準も満たせるとのことでした。
理屈としては納得できる。けれど、ひとつ気がかりな点が残ります。

プライバシーが守れないレイアウト

ひとつの空間を、仕切りで分けるだけ。
そうなると、隣の患者さんとの距離は仕切り一枚分。

美容医療という繊細なサービスにおいて、他の人の気配を感じる環境はどうしても落ち着きません。
カウンセリングも、処置も、できる限り「一人で過ごせる空間」にしたいというのが、私の一貫した想いです。

そのため、この案は「一案として受け止めたうえで、もう少し検討させてください」と伝え、再度レイアウトを引き直してもらうことにしました。

「うちの面積」じゃなくて、「建物全体」だった

今回の件をきっかけに、私自身も条例を改めて確認してみました。
すると記載されていたのは──

「延床面積500㎡以上の建築物では、廊下幅を1.4m以上とする」

この「延床面積」、私はてっきり自分のテナント(約120㎡)のことだと思っていました。
ところが実際には、建物全体の延床面積が対象だということが分かったのです。

つまり、私たちのような小さな一室でも、大きなビルに入っていればこの条例が適用される。
これは、完全に盲点でした。

「機能性」と「安心感」のあいだで

法令や基準を守ることは、当然とても大切なこと。
でもそれだけでは、患者さんにとって安心できる空間になるとは限りません。

限られた面積の中で、どうやって法令をクリアしながら、プライバシーや快適さも確保するのか。
それは、まさに「設計」と「医療」の間にある領域のように思います。

チームで探る、ベストな答え

今回もまた、図面の中にいくつもの制約と工夫が交錯しました。
そして、あらためて気づかされます。

クリニックをつくるということは、“誰かの過ごし方”を一つずつ丁寧に選び取っていく作業なのだと。

他社の視点や経験を柔軟に受け取りながら、自分の理念と照らし合わせて、最善のかたちを探っていきたい。
そんなふうに感じた打ち合わせでした。

次回予告

vol.6では、美容クリニック設計に特化した会社さんとの2回目の打ち合わせへ。
再提案されたプランは、図面だけでなく、映像によって“世界観”を伝えるという新たなアプローチでした。
理想に近づく手応えと、設計監理上の思わぬ制約に揺れた1日について。

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