再びの打ち合わせ
今回の打ち合わせは、以前「保険診療ベースのようだ」と感じてしまった設計会社さんとの再会でした。
正直なところ、当時は「美容医療には合わないかもしれない」と半ばあきらめかけていた部分もありました。
でも、今回はまったく違う提案が登場。
私の要望やコンセプトをしっかり汲んだうえで、洗練されたプランを提示してくださったのです。
「この発想、自分では出てこなかったな…」
と、素直に感動。プロの力をあらためて実感する時間になりました。
避難経路という“目に見えない制約”
今回のプランで特に驚いたのが、“避難経路”に関する考え方。
診療所では、法的に避難用ドアや通路幅の確保といった条件が求められます。
この制約を逆手に取るような提案が印象的でした。
避難用ドアはあらかじめテナントに設定されていました。
「どうせ通路をつくらなければならないなら、いっそ患者さんとスタッフの導線を分けてしまおう」
そうすることで、結果的に動線がとてもスムーズになり、院内全体の“動きやすさ”が格段に上がったのです。
気になる「声」の問題
ただ、一つだけ気になっているのが、診察室とバックヤードが直結している点。
動線としてはとても便利。
けれど、スタッフの声が診察室に響いてしまわないかという不安が残ります。
実際、以前勤務していたクリニックでは、スタッフの談笑が診察室に響いてしまい、
「落ち着かない」というご意見をいただいたこともありました。
BGMである程度はカバーできるかもしれませんが、
やはり防音対策も含めて検討すべきポイントだと感じています
防火基準のはなし
もう一つ、建築的な制約として出てきたのが、防火の問題です。
診察室や処置室を“完全個室”にする場合、排煙設備が必要になります。
しかし、排煙を設けずに個室化する方法もあり、その場合は机や棚をすべて不燃素材にすることで基準をクリアできるとのこと。
このあたりは、医師としての私にはなかなか判断が難しい領域。
だからこそ、設計士さんたちとの連携が不可欠だと感じました。
設計も医療と同じ、“チーム戦”
避難経路、防音、防火、そして導線。
設計には、想像以上に多くの条件と選択肢があります。
そしてそれらは、空間そのものだけでなく、診療の質や患者さんの体験にも直結するもの。
だからこそ、「医療の目線」だけでは見えない部分を、プロの力で補ってもらうことの大切さを強く実感しました。
理想のクリニックに向かって、また一歩。
そう感じられるような、充実した打ち合わせとなりました。
次回予告
vol.5では、また別の設計会社との打ち合わせで浮上した「廊下幅問題」について。
札幌市の条例によって求められる“1.4mの廊下幅”という新たな条件と、それに伴う空間設計の工夫。
法令遵守とプライバシーの両立という、開業準備ならではのジレンマに向き合う。
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