肌育って、結局なに?
最近、「肌育」という言葉をよく耳にするようになりました。
肌育注射、肌育プログラム、肌育パック──。
美容医療の現場だけでなく、SNSや広告の中でも当たり前のように使われています。
でも、その意味や目的は、じつは人によって少しずつ違っていたりします。
製剤の名前だけが先行し、「肌育=肌に良いものを入れること」になってしまっていることも。
前回のPart1では、「創傷治癒」と「肌育」の違いを整理しました。
今回は、肌を本質的に“育てていく”注射製剤たちについて、改めて考えてみたいと思います。
肌を育てる=EPCsを整えること
美しい肌とは、どんな肌でしょうか。
前回も少し触れたように、近年ではEPCs(Emergent Perceptual Categories) という考え方が注目されています。これは、肌の印象を構成する4つの視点であり、肌診断機器の設計や、化粧品・美容医療の評価基準としても用いられています。
- Skin Tone Evenness(色調の均一性)
肌色のムラが少なく、明るく均一に見える - Skin Surface Evenness(表面の平滑)
キメが整い、毛穴や凹凸が目立たないこと - Skin Firmness(ハリ・弾力)
肌が柔軟に弾むような張りがある - Skin Glow(ツヤ・うるおい)
自然なツヤや透明感、そして血色感がある
肌育とは、この4つの条件を、肌そのものの力で底上げしていくプロセス。
そのためには、単に「与える」だけでなく、「肌が育つ環境」を整えていくことが必要なのです。
肌を庭に例えると
肌を育てるという行為は、どこか“庭づくり”にも似ています。
ひとつの種だけでは花は咲かず、
肥料や水、陽の光、土の状態──すべてが少しずつ整って、やがて花がひらく。
肌における“育てる治療”も同じで、
それぞれの製剤が異なる役割を担いながら、少しずつ肌の土壌を整えていきます。
ここでは、そうした製剤たちを“肌という庭”になぞらえて、
その働きに応じて4つの役割に分類してみました。
種まき | 再生スイッチを入れる | PN(ポリヌクレオチド/リジュランなど) | 線維芽細胞を刺激し、再生の起点をつくる |
肥料 | 材料と育成因子を届ける | アミノ酸製剤(スネコスなど) | コラーゲン・エラスチンの材料や設計図を届ける |
地中の水分 | 水分環境を整える | 非架橋ヒアルロン酸製剤 | 肌の保湿とバリア機能の改善 |
根が張れる地盤 | 深層の土台をつくる | プロファイロ、ジャルプロスーパーハイドロ | 肌の内側の構造を安定させ、深層保水による土台の強化 |
PNは「スイッチ」であり「材料」
なかでもPN(ポリヌクレオチド)は、“肌育”の出発点のような存在です。
PNは線維芽細胞をやさしく刺激し、再生のスイッチを入れると同時に、
細胞が働くための材料(ヌクレオチド)にも分解されます。
肌の中で起きているのは、まさに「目覚めて、育つ」プロセス。
特にPNは、刻まれた小じわや浅い折れジワなどに対しても、肌自らが再構築を始める力を引き出すため、「しわを薄くしていく」再生的アプローチが期待されます。
一方で、非架橋ヒアルロン酸やプロファイロ・ジャルプロスーパーハイドロなどの製剤は、
肌全体の水分バランスや土台構造を整えながら、「しわが寄りにくい肌」へと導いていくのが得意です。
同じ“肌育”でも、今あるしわを戻すのか/これからのしわを防ぐのかで、目的や選ぶ製剤が少しずつ変わってきます。
「なにが足りないか」
すべての肌に、同じ成分が必要なわけではありません。
肌育とは、「何を入れるか」よりも「何が不足しているのか」を見極める作業です。
たとえば──
- 慢性的な乾燥がある方には、まず非架橋ヒアルロン酸で水分環境の改善を。
- ハリやツヤが落ちてきた方には、PNやアミノ酸で再生と材料の補給を。
- エイジングが進んでボリュームが失われてきた方には、プロファイロやジャルプロスーパーハイドロで深層の土台を。
肌が整うには、順序があります。
そして、その順序は、肌の状態や年齢、生活習慣によっても変わってくるのです。
肌育は「長く付き合う」もの
肌を“育てる”という考え方には、「時間」が必要です。
一度で大きく変わる治療ではなく、肌と向き合いながら育てていくプロセス。
「良くなったような気がする」
その感覚が、数週間後、数ヶ月後に、確かな変化として現れてくることもあります。
肌はすぐに反応してくれることもあれば、ゆっくりとしか変われないときもある。
環境を整えることで、肌は本来の力を取り戻しやすくなる。
そんな“小さな再生”を支えるのが、肌育製剤の役割なのかもしれません。
さいごに
創傷治癒のように「壊して作る」治療と、
肌育注射のように「整えて育てる」治療。
どちらが正しいということではなく、
それぞれが担う役割を理解して使い分けることで、肌の未来はもっと整っていく。
Glowaでは、そんな視点でひとりひとりの「肌の育ち方」を見つけていきたいと考えています。
派手な変化ではないけれど、芯から健やかで、ふとした瞬間に“きれい”がにじみ出るような肌を。
そんな思いで、今、肌育治療のプランを密かに構想中です。
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